兄川、弟川の風景 続き
- tanizawae
- 2014年10月26日
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兄川、弟川の風景の続き
山梨市には、三富地区に、「大嶽山那賀都神社」という、近年若者が多く訪れる神社がありますが、私たち八幡地区では、「大嶽山」というと、身近な、塔の山にある「差出磯大嶽山神社」のことを指します。
何でも、兄が帰郷した折、大嶽山に登り、眼下の笛吹川を眺めていて、杜甫の詩 「昔聞洞底水 今上岳陽楼」を思い出し、「昔聞笛川水 今上大嶽山」と当てはめたそうです。
大嶽山から富士山を臨み、視線を左に移していくと、御坂山地、大菩薩連嶺まで180度続く稜線と平行して、目の前に笛吹川が走ります。その雄大な景色から、さらに振り向くように視線を左に向けると、奥秩父山塊の麓、日本の里百選の八幡・牧丘があります。
祖父の故郷の牧丘にも、笛吹川と、そこに注ぎ込む、琴川、堤川という、雅楽を奏でるかのような名前の二つの支流があります。牧丘と八幡の間には、以前にも書いた、岩手(いわで)という、多くの文化財を抱える、こじんまりした入り江のような地区があります。
大嶽山からそれらの地区を眺めると、里山、集落、果樹園のようすなど、それぞれの特色はありますが、八幡・牧丘というよりも、岩手を含む、八幡から牧丘までの一帯の景観と見る方がしっくり来ます。
窪田空穂の、「兄川に 並ぶ弟川 ほそぼそと 青山峡を 流れてくだる 」、この歌の主語である弟川は空穂自身のことらしいとのことです。
長野県出身の窪田空穂という人が、雄大な景色を前にして、八幡の扇状地を流れる兄弟の川と、不安そうに「ほそぼそと」大川に流れこむ弟川の姿に目をやり、遠い昔の自身の出立の頃を振り返ったのかもしれません。
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