小説「万力林」
- tanizawae
- 2014年10月31日
- 読了時間: 2分
「谺(こだま」という同人誌に、深沢七郎も寄稿したことがあるということを友人から聞いて、その同人の牧宏さんという方の「おれは縄者ー差出・万力林ー」という小説を読みました。まだ昭和の時代のことです。
読み終えて何十年もたち、かなり忘れていて、ふるさとの歴史を振り返るときに、自分なりに、事実や印象を編集しながら断片的に思い出すといったところです。
内容は、武田信玄の時代に、信州から連れてこられた縄者(捕虜)が、荒れ狂う笛吹川の治水のため、松を植え、万力林を造るという物語です、というとサクセスストーリーのようですが、この作品もまたテレビでおなじみの時代劇とは全く異質です。
著者が「あとがき」で書いています。
「・・・終戦は満州のハルピンだった。国の崩壊を目のあたりに、数しれぬ死を見た。それまで、死は、美しいもの、名誉なもの、永遠なもの、と教わった。自分でも、そうでなければならぬ、と思っていた。が、死はどろどろの腐れだった。
それから、死のある生が、恐ろしくなった。・・・・」
甲州弁には慣れているはずでも、小説全体を通して、荒っぽく感じ、粗野、低俗、野蛮なシーンが満ちているのは、捕虜の目線で描かれているからです。大衆受けする作品ではありませんが、読み終えて、泥沼に睡蓮の花を見るような気分になりました。
続く
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